万年筆のペン先には、微妙な弾力があります。それは、セーラーならではの焼入れ技術が生んだしなやかさです。そして、ペン芯は気温や気圧の変化にも耐える高性能で貯蔵容量の大きいものを使用し、滑らかさを保つためエアータイトをして乾きにくい構造にしてあります。
より優れたペン先を模索するところから始まるこうした一連の作業工程は、すべて熟練した職人の技術によって支えられています。
ここでは、万年筆のペン先をメインに、製造工程を大まかにご説明いたします。
皆さまが万年筆を手に取る時、仕事に精魂込める職人に思いをめぐらせていただけたら、これ以上の喜びはありません。
14K、21Kといった金ペンの元になる合金を作る工程です。金以外にも、ペン先に求められる弾力や耐食性を考慮した色々な金属を配合しています。
熔解した合金を、ペン先の種類ごとに決められた厚みになるまで伸ばしていきます。大きく分けて2段階で約20回程度圧延を繰り返します。
圧延した帯材をペンの形に打ち抜きます。
空気の入り口でもあるハート穴を空け、刻印を用いてマーク打ちを行います。
ペン先の基本形状となる、カーブをつけ成形します。
ペンポイントを電気溶接により取付けます。ペンポイントは筆記による磨耗に長期間耐える合金を使用しています。
ペンポイントを付けた後は、字幅ごとに決められたサイズに砥石で粗取りし、形状を整えます。
薄い砥石でペン先に切れ目を入れ、インキの道(切り割り)を作ります。
砥石で、ペン先の形状を仕上げていきます。研がれたペン先はその後つやだしとキズ落としのため、布のローラーに当てて磨きます(羽布磨き)。
大先に組み込んだペン先を湯につけてペン芯がペン先に隙間なくくっつくまで変形させたのち(あぶり)、1本1本顕微鏡を用いてペン先の上下のズレや左右の隙間、及びペン芯との隙間を指先にて最後の調整を行います。
筆記に支障がないか、1本1本薄いインクを使用して実際に筆記確認をします。
ペン先はこのあと洗浄され、胴軸などを取り付ける作業へ移ります。
ペン先が組み込まれた大先と胴軸を手作業で組み立てていきます。プロフェッショナルギアの蓋栓には刻印バッチを組み立て、最後に蓋と胴を組み立てます。
きちんと嵌合しているかどうか確認できたら完成です。
完成した万年筆は、一本ずつ袋に入れて包装し、店頭へと運ばれていきます。