伝統的な蒔絵の手法と現代的な感性を結びつけた『Classic Ko蒔絵文房万年筆・ボールペン』。
古くからセーラーとのつながりがある蒔絵工房「大下香仙工房」の蒔絵ジュエリーブランド「Classic Ko(クラシックコー)」とのコラボレーションで生まれたこの製品は、これまでの蒔絵万年筆・ボールペンとは一線を画す世界観を纏ったシリーズとして2020年より展開してきました。
大下香仙工房の五代目であり、Classic Koのブランド・ディレクションも手がける大下香征さんにお話を伺いました。
蒔絵とは日本独自に発達した漆工芸の代表的な加飾技法の一つです。1200年ほど前から行われており、その歴史は奈良時代にまでさかのぼります。漆で絵や文様を描き、漆が乾かないうちに蒔絵粉(金・銀などの金属粉)を蒔きつけて装飾を施します。粉を蒔いて絵にすることから「蒔絵」と呼ばれています。螺鈿・卵殻などと組み合わせる加飾法も存在します。
———まずは、ジュエリーブランドClassic Koについて教えてください
Classic Koは北陸の伝統工芸である加賀蒔絵のさまざまな技法を駆使しつつ、現代の感性を生かした装飾品を発表している蒔絵ジュエリーブランドです。製造元は創業130年、茶器や美術工芸品を手掛けてきた漆工芸大下香仙工房。デザインから制作、ボディーとなる白蝶貝の一部加工から、ブランドディレクション、販売まで一貫して行っています。
———大下香仙工房では主にどんなものを制作されてきたのでしょうか?
先代の四代目までは、主に茶器や棗・香合といった茶道具や印籠や根付けなどの美術工芸品を手掛けてきました。高級筆記具の意匠開発と蒔絵加工にも携わっています。
———大下香仙工房とセーラーのつながりは1981年、香征さんの義父である四代目宗香さんの代からですね。最初の製品は、古代花鳥の木軸万年筆でした。
蒔絵は日本様式の大和絵からスタートしていますが、うちではフクロウや秋草など、蒔絵の中でもより親しみやすいモチーフを扱っていたのが印象的でした。あとは日本画の女性作家さんが描かれた絵柄を一般的な黒いベースではなく白いベースに蒔絵として施したり、インドのカスタマー向けにガネーシャ(象の顔をしたヒンズー教の神様)の蒔絵をデザインしたりだとか。
———これまでは主に『木軸黒檀加賀高蒔絵万年筆』や『キングプロフィット エボナイト蒔絵』で山水や四霊の蒔絵を施していただいていましたね。
———蒔絵工房からジュエリーブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。
Classic Ko は2008年に立ち上げました。1999~2003年頃うちの工房では、神話などに登場する現地のモチーフを使った海外向けの蒔絵万年筆の依頼が増えた時期でした。それまで工房として作っていた茶器などの専門的なものはなかなか人に見てもらえない状況で、その頃から自分たちでどんなものを作っていけば良いのかを考えていました。「蒔絵の面白さを伝えていくには、最終商品を作って自分たちで生産・販売ができるようになっていかないと」と。それで商品開発をいろいろ考えて辿り着いたのがClassic Koの始まりです。
———ブランド名の由来は何ですか?
大下香仙工房の初代「大下雪香(せっこう)」から代々受け継がれる「雅号」としての「香(Ko)コー」と、「古典的な、一流の、時代に左右されない」という意味の語源を持つ「Classic /クラシック」を組み合わせて名付けました。100年後にクラシックと呼ばれるような存在になりたいという思いもありました。
———Classic Koのジュエリーは現代的なデザインが魅力の一つですが、そこに至るまでにどんな経緯がありましたか?
それまで蒔絵工芸品は、日本の伝統的な花鳥風月などのデザインがほとんどでした。これが日本様式というのはわかるのですが、工房に婿として入った私が神奈川県出身でグラフィックデザインをしていた経歴もあって、従来のテイスト以外にデザインを現代に響くものへアップデートできないかと感じていました。「蒔絵の古くて重たいイメージを変えたい」「蒔絵自体に関心を持ってくれる人を増やしたい」という想いが強かったです。半分は「蒔絵のものづくりを自分の興味のある方向性で深めていきたい」という思惑もありました。ブランド立ち上げ前に携わらせていただいた、現地モチーフの海外向け万年筆の影響もありますね。絵柄は異文化のものだけど、蒔絵にすることで日本的な雰囲気もある、すごく面白い仕上がりになったんです。だからそのミックスカルチャーのような、例えば中近東のエキゾチックな雰囲気や東洋と西洋の文化が交わったテイストをきっかけとしてClassic Koの世界観を作り上げていきました。
デザインは、工房内の作り手たち皆がそれぞれ手掛けており、テーマを概ね4つに落とし込んで世界観を共有しながら制作しています。物語性を感じるような可愛らしいものと、スタイリングに合わせやすく素材を活かしたシンプルなもの、アールデコのようなちょっと昔の植物的な雰囲気のもの、その中でもお花のような華やかなデザインのもの。制作していく中で、私たち自身も面白いと感じています。「こんなのできちゃったね!」みたいなことで生まれるデザインもあり、すごく楽しいです。
———デザインの他にもこだわりはありますか?
着用感ですね。主に茶道具や万年筆を手掛けていた頃は、蒔絵の作りやすさや見栄えなどで考えていましたが、ジュエリーとなると、着けやすさや重量感、服に着けてどのくらい映えるとか、その人を引き立たせるとか、万年筆などとは少し考え方が違うということも意識しています。蒔絵を磨き込んでからガラスコーティングをして強度を高めたり、金具の開発から携わったり、当然ですがジュエリーとしての使用感と構造設計にもこだわっています。
あと、蒔絵のベースには天然素材を使用しています。漆塗りもありますが、一番多いのは天然素材。琥珀やパール、白蝶貝、黒蝶貝、クオーツ、ターコイズなど。透明のクオーツでもちょっと曇りが入ったものとか、自然みがあるものが良いですね。例えば石の肌をわざと残すなど、機械製品じゃない自然味あるところが魅力になるよう、素材選びやデザインづくりをしています。
———『Classic Ko蒔絵文房万年筆 フローレットドット SV』の蒔絵が出来上がるまでの工程を教えてください。
(工程が多いため図で表します)
———膨大な工数を全て手作業で行っているんですね。『Classic Ko蒔絵文房万年筆 デコロータスライン ラデン』の螺鈿を貼るのも気が遠くなる作業ですね…
かなり時間がかかりますね。貼り付ける形で仕入れているわけではなく、弓なりの板状のものを切ってから貼っています。貝は光る方向があって、向きを変えると光ったり光らなかったりするんですよ。色もそれぞれ違います。なので、光と色を一個一個見定めながらまとめています。
———制作の中で一番大変なことは何ですか?
とにかく手間ひまがかかることですね。漆の乾き具合を見ながらゆっくりやっていかないといけないし、手間と吟味の連続。特にうちのジュエリーは、技を魅せるというよりは、どちらかというとデザイン性や素材をどう魅せるか。それに対してきちんとした仕事をしっかり淡々と積み上げていくことを大事にしています。
明治より継がれる確かな技術を持ちつつ、現代のライフスタイルに合わせて変化していったClassic Koの蒔絵。蒔絵万年筆の新たな価値を求める弊社セーラー万年筆の考え方と一致し、コラボレーションが実現しました。
この度仲間入りしたAla SV万年筆では、スモーキークオーツをイメージした透明のベースに蒔絵を施すという新たな挑戦をしています。
ジュエリーのように手元をパッと華やかにするClassic Ko蒔絵文房シリーズ、ぜひお楽しみください。
Classic Ko
2008年 Classic Koとして蒔絵ジュエリーブランド設立
2012年 皆川明氏デザイン「Sally Scott」アクセサリーコラボレーション
2013年 サントリーホール「ウィーンフィルハーモニー管弦楽団贈答品(友情の鍵)」制作
2015年 舘鼻則孝氏「Theory of the elements」制作協力
2020年 国際漆展・石川2020 デザイン部門 奨励賞
Classic Ko 公式サイト http://www.classic-ko.jp/
Classic Koのアイテムは、主に首都圏の百貨店やギャラリーショップでのポップアップにて販売。
『Classic Ko蒔絵文房万年筆・ボールペン』製品ページはこちら
Classic Ko 蒔絵文房万年筆 Deco Lotus line RADEN(デコロータスラインラデン)
Classic Ko 蒔絵文房万年筆 Bamboo mesh SV(バンブーメッシュ SV)
Classic Ko 蒔絵文房ボールペン Bamboo mesh SV(バンブーメッシュ SV)
Classic Ko 蒔絵文房万年筆 Floret dot SV(フローレット ドット SV)
Classic Ko 蒔絵文房ボールペン Floret dot SV(フローレット ドット SV)
NEW Classic Ko 蒔絵文房万年筆 Ala SV(アーラ SV)
公開日:2024年6月25日